地域には様々な課題がある。その課題を解決するために目標を定めて行動を起こそうという視点SDG’s「Sustainable Development Goals持続可能な開発目標」がグローバルな考え方として社会で広く認知され始めた。これまで近江楽座が積み上げてきた多くの活動実績と経験はそんな大げさなものではない。地域というフィールドには、学生や研究に携わる者たちが異なった目標を、異なったスケジュールで主体的に活動を始められる多くの入り口がある。そしてそれらの目標を、彼らにとってはゴールではなく、これから持続していかなければならない地域社会の長く遠い将来を、自分たちの近い将来と重ね合わせて展望しているのである。異なる目標を有機的に結びつけながら広い視点で解決策を導き出すことが、学生たち近江楽座のミッションと言える。地域でSDG’sを印籠に活動しようとするにはまだ少し無理があるかもしれない。国際的な企業や国レベルのグローバルガバナンスの手法としての新しさはあるが、地域スケールのまちづくりや、伝統資源、日常の豊かさへの価値観、コミュニティの結びつきにまで包括的に考えられているわけではない。169のテーマ内容を具体的に地域課題に置き換えてイメージすることはまだ難しい。国際レベルのグローバルな視点を持ちつつ、地域レベルでどう目標を設定するかが求められているのである。
今年は近江楽座のこれまでの活動を、それぞれSDG’sの視点で評価する試みを始めた。活動の応募申請にも、17のゴールについての選択項目を記入し評価を受けるようになった。つまり学生たちの活動が持続可能な社会を築く上で、小さな手のひらサイズの試みから、その積み重ねがしっかりとした社会的道筋となることが求められるようになってきたのである。すでに学生たちは、これまで漠然と考えてきた持続社会とはどんな社会なのか、ということを学び、理解しようと、問い始めている。その活動を共有してきた仕組みが近江楽座だったのだ。
SDG’sが目指すゴールは様々だが、誰も取り残さない協働の社会行動を具現化していることは、大学教育の本質と重なる部分が大きい。学生たちは入学し、学び、卒業し、社会に出て成長していく。持続社会とは常に次々とバトンタッチして続けていく社会のことである。それは、環境、資源、経済の維持、延命だけではない。その過程で革新的なイノベーションや、構造転換などが起きたり、新たな視点、価値観を持った地域共同体が出現することで、目標は刻々と変化して行く。規制やルールで縛られない、そんな融通無碍な社会になっても持続可能にして行くために、皆が仮説のゴールを立てて、それを目指している。多くのハードルを超えてたどり着いたゴールで見えるものは、イメージしていた社会だろうか。その先に次のゴールが生まれているかもしれない。そこで一旦思考停止してもまた社会は動いて行く。また課題が生まれゴールを探す行動を開始するのである。ゴールは終わりではない。
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