Innami Synthesize Planning

印南総合計画

学生たちが気づく地域活動の公益性

 学生たちは、自分の関心ごとや、勉強、サークル活動、アルバイトなど目の前の日々の暮らしで手一杯の日常を送っている。彼らが地域社会で起きていることに当事者意識を持ち、かつその現場に参加しようという気持ちになることは簡単なことではない。毎年新しい学生たちが近江楽座の門を叩いてくる。大学で学んでいる自分の研究領域や、関心ごとから地域と接点を持ち、共感できる仲間や参加者が集まり始める。そこで多様な視点で地域課題への理解を深め、共に活動する機会を通して公益性の視点が芽生えてくる。  地域活動の本質は地域が抱える様々な問題解決のために尽力することや、有形無形の資源の発掘、情報発信、産業発展、伝統の継承、プライドづくりなど社会的な面で尽力することにある。志を共有している個人が、集まって組織になることでそこには継続の力が生まれてくる。そして担い手の個性や能力によって公益力のある活動となって行く。しかし、そのような人材や組織を短い時間で育むことはできない。
 そこで考えてみよう。大学という公共資源は、意外と社会的信用力は大きい。 様々な学部、広範な教育研究領域において専門的な知見を持つ人材が多い。歴史文化に造詣が深い者、建築、まちづくりを専門とする者、問題発見調査能力がある者、デザインができる者など、それら個性や能力を総動員できる可能性を持っている。講演、講義、執筆など研究発表を通して社会的な情報発信力、広報宣伝効果もある。これまで、地域と大学の関係は、敷居が高く日常的な関係は薄かった。大学教員は、分野にもよるが、必ずしも現場経験が豊富でなく、机上の理論優先のアカデミックな対応しか行ってこなかった。しかし、大学で学ぶ学生たちには、自分たちの能力の成長度合いを試す機会と場所が必要だ。本学では、授業や課題で学外に出て地域との接点をはかる取り組みやフィールドワークを大学創立以来続けてきた。地域は、先人たちの手による営み、風景、自然を大切に暮らしにとどめおいている。その中で得やすい対話を通じて、多くの指摘から問題意識を醸成させる教育を行なっている。その経験が知らず知らずのうちに地域へのハードルを低くしている。成長途上の自分たちでもこんなことができるのではないか、地域のためだけでなく自分のためだ、という気づきを得られる自主的な自立した活動の場が近江楽座なのだ。
 学生たちの地域への気づきには、まだ頼りないボランティア精神のような正義感がモチベーションになっている。そこには地域ヘの公益性の意識が潜んでいる。近所どうしのつながりに割り込んで行くような力ずくの活動ではない。明確なメッセージを発信できるようになることで、活動が理解され、プライドが芽生え、しっかりとした組織になって活動の質、意義を高めることができるだろう。後輩たちはその組織からも学び、当事者となって活動を継承している。学生たちの地域活動が日常になりつつある。

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