Innami Synthesize Planning

印南総合計画

ありふれた日常の贅沢

 最近、日本中で雨後の筍のように盛んに生まれている地域活動。それらは何を目指しているのだろう。地域ブランド、産学連携、まちづくり、ワークショップ、セミナー、伝統産業市場開発など、日本中が忙しい。47都道府県、1742市町村がまるで競い合っているかのようだ。しかしそれらの足並みは実はみな同じだ。観光誘致、6次産業、コミュニティデザイン、高齢者問題、景観形成、移住定住促進などの言葉をタグ付けすればほとんどの活動を網羅できる。活性化や再生という言葉は活動の目標として耳に心地よい。問題探しに明け暮れ、これから縮小していく人口、市場をお互いに奪い合う。奪われた側が存在することを想像していない。
 日本の地域には必然としての祭事がしっかりと引き継がれている。これらも地域活動だ。季節を感じるイベントこそが日常の営みを支えてきた。先人たちへの畏敬、冠婚葬祭、自然の恵みと健康への感謝、風景を愛でる眼差し、自然との闘い、未来への貢献。これが月並みな地域活動だと思う人はいない。地域の魅力的な資源とは月並みな生活のなかに隠れている。
 近江の人々は琵琶湖を中心に暮らしている。そこにはありふれた日常を輝きに変える風景がちりばめられている。そして近江の人々は、それらの風景を独り占めできる日常を送っている。なんとも贅沢な日常だ。誰にも邪魔されない月並みな生活こそ贅沢であることを感じることができるはずだ。
 イベントだらけの外来者に溢れた騒がしい地域に、私は住みたくない。日々の労働を癒す休息、交流のハレの時間、自然環境への畏敬のリズム、それらが次第に壊されている。時間を大切にできる生活ができない地域や、テーマパーク型活動に明け暮れる地域に魅力は感じない。風景を守る地域、先人たちの遺構や伝統文化を守る地域、自然の恵みを守る地域、産業活動を守る地域、各々の地域の特性をシェアし、それぞれの日常の魅力をお裾分けしていくような関係づくりが本当の地域活動と言えるのではないだろうか。

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